スキンケアの保湿成分として、今や定番となった「セラミド」。セラミドが肌のうるおいに欠かせない大切な成分であることは、多くの方がご存知かと思います。
しかし、「セラミド配合なら、どれも同じようなもの?」と思っていませんか?
実はセラミドの世界はとても奥深く、今回はその中でも特に重要な「ヒト型セラミド」について、その効果の鍵を握る「長さ」に注目して深掘りしていきます。
そもそも「セラミド」の役割とは?
まずはおさらいです。私たちの肌の一番外側には、わずか0.02mm、食品用ラップほどの薄さの「角層」があります。
この角層は、レンガのように積み重なった「角層細胞」と、その隙間を埋めるセメントのような「細胞間脂質」でできています。この“セメント”の主成分こそが「セラミド」です。
セラミドがセメントとして隙間をしっかり満たすことで、肌のうるおいを守る「バリア機能」が正常に働き、水分の蒸発を防ぎ、外部刺激に負けないキメの整った肌を保つことができます。
しかし、この大切なセラミドは年齢とともに減少することが報告されています。だからこそ、質の良いセラミドをスキンケアで効果的に補うことが、美肌づくりの鍵となるのです。
アトピー肌の研究で分かった「セラミドの長さ」の重要性
最近の研究で、アトピー性皮膚炎の方の肌では、健康な肌と比べてセラミドの「脂肪酸の長さ」に違いがあることが分かってきました。
こちらの報告によると、アトピーの方の肌では、炭素の数が少ない“短いセラミド”が大幅に増加していました。さらに、セラミド同士を繋ぎ止める“親玉”のような存在である「アシルセラミド」も減少していました。
つまり、肌のセメントであるセラミドが、短いものばかりになってしまい、バリア機能が弱まっていると考えられています。
このことから、私たちはただセラミドを補うだけでなく、“長い脂肪酸を持つセラミド”を補給することが、バリア機能の改善、ひいては乾燥に悩む肌にとって効果的だと考えています。
ヒト型セラミドにも種類が?「長さ」と「多様性」の違い
現在、化粧品に使われるヒト型セラミドは、主に2つに分類されます。
-
合成(発酵法など)によるヒト型セラミド
酵母などを利用し、特定の構造を持つセラミドを狙って製造します。均一な長さ(例:C36など)であることが特徴です。中には、バリア機能の要である“親玉”「アシルセラミド(EOP, EOSなど)」を単体で製造することも可能です。 -
天然由来のヒト型セラミド
醤油粕などから抽出されます。最大の特徴は、単一の長さではなく、人の肌が本来持つように、短いものから長いものまで様々な長さのセラミドをバランス良く含んでいる点です。特に、C32〜C46といった長いセラミドを豊富に含み、近年では天然由来の「アシルセラミド」を抽出する技術も開発され、注目されています。
どちらが良いかという点に明確な結論はまだありませんが、私たちは、人の肌に近い“多様な長さのセラミド群”をバランスよく補給することが、より本質的なケアに繋がると考えています。
長いヒト型セラミドを肌に届けるための挑戦
バリア機能のためには“長いセラミド”が良い。しかし、これを化粧品に配合するのは非常に困難です。なぜなら、長いセラミドは結晶化しやすく、化粧水などに配合しても固まって沈殿してしまうのです。これでは角層のすみずみまで届けることはできません。
この課題を解決するため、私たちはセラミド研究のパイオニアであるジェヌインR&D様と共同開発を行いました。
ジェヌインR&D様の独自技術である「ナノ化技術」を用いることで、長い天然ヒト型セラミドを極めて細かい粒子にして、安定して高濃度配合することに成功(イメージは下記写真の右図)。ついに「スプレーゼNCエッセンス」が誕生しました。
アシルセラミドは含まれていませんが、天然由来のヒト型セラミドAP、NPなどを合計約0.1%と高濃度で配合。これにより、肌に本来のうるおいと力強さを届けます。
単に水分を与えるだけでなく、肌の“守る力”そのものをサポートすることで、外部刺激でゆらぎにくく、うるおいを自ら保てるような、しっとりと落ち着いた肌を目指せます。日々のスキンケアにぜひ取り入れて、その違いを実感してみてください。
参考文献
Imokawa, Genji, Akihito Abe, Kumi Jin, Yuko Higaki, Makoto Kawashima, and Akira Hidano. “Decreased Level of Ceramides in Stratum Corneum of Atopic Dermatitis: An Etiologic Factor in Atopic Dry Skin?” Journal of Investigative Dermatology 96, no. 4 (1991): 523–26. https://doi.org/10.1111/1523-1747.ep12470233.
Janssens, M., J. Van Smeden, G. S. Gooris, W. Bras, G. Portale, P. J. Caspers, R. J. Vreeken, T. Hankemeier, S. Kezic, R. Wolterbeek, and J. A. Bouwstra. “Increase in Short-Chain Ceramides Correlates with an Altered Lipid Organization and Decreased Barrier Function in Atopic Eczema Patients.” Journal of Lipid Research 53, no. 12 (2012): 2755–66. https://doi.org/10.1194/jlr.P023238.