こんにちは。スプレーゼ研究部の住田です。
「シミ・そばかすを防ぐ」と訴求されているビタミンC配合の美白化粧品(医薬部外品)と、ビタミンC25%の高濃度美容液(化粧品)。
一体どっちが効果があるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
「医薬部外品は有効成分が入ってるから効果がある。化粧品は効果がない」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実はそう単純ではありません。
場合によっては、医薬部外品よりも化粧品の方が効果が高いという、ちょっと不思議な逆転現象が起こることもあるのです。
これには、日本の「薬機法」という法律と広告ガイドラインの規制が深く絡んでいます。
化粧品研究職の私が、化粧品開発の裏側について、分かりやすく解説していきながら、効果的な化粧品を選ぶ失敗しないコツをお話しします。
化粧品と医薬部外品の違い:成分と効果の境界線
まず、この2つの決定的な違いは「有効成分」の有無にあります。
医薬部外品は、厚生労働省に効果が認められた「有効成分」が配合されており、その効果(例:「シミ・そばかすを防ぐ」「シワを改善する」など)をパッケージ等で訴求できます。
さらに、医薬部外品でないと配合してはいけない成分もあり、例えば、トラネキサム酸、ヘパリン類似物質などがあります。
しかし、ここからが重要なポイントです。
医薬部外品のデメリット:新成分の配合や高濃度配合ができない
医薬部外品は「国が認めた安全な成分」しか配合できません。そのため、世界中で毎年開発されている最新の機能性成分や植物エキスなどは、基本的に配合できないのです。
なぜかというと、安全性について「動物実験をしたデータ」でないとダメな項目があるからです。しかし、世界的に「動物実験を行わない」流れになっているため、新規成分の安全性の担保(承認取得)が非常に難しくなっています。
また、配合できる成分や量にも厳格なルールがあるため、処方設計(レシピ作り)の自由度は低くなります。
化粧品のメリット:自由な設計と最新技術
対して化粧品は、メーカーが安全性と効果を担保していれば、基本的にどんな成分でも自由に配合できます。(※もちろん、化粧品基準などの最低限のルールはあります)
つまり、開発されたばかりの画期的な美容成分をすぐに取り入れたり、成分の濃度を調整したりといった、自由で攻めた処方設計が可能になるのです。
デメリットとしては、効果的な配合量であったとしても、法律上、シミを防ぐなどの広告はしてはいけないのです。
効果の逆転現象:化粧品が医薬部外品を超える瞬間
この「自由な処方設計」こそが、効果の逆転現象を生み出します。
医薬部外品で有効成分とされる成分を、医薬部外品以上に高濃度で化粧品に配合することが可能だからです。
分かりやすく、抗炎症成分「グリチルリチン酸ジカリウム(以下、GK2)」を例に挙げましょう。
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医薬部外品の場合:
例えば0.05%の配合で抗炎症効果が認められ、製品化されます。 -
化粧品の場合:
配合上限の範囲内であれば、0.5%配合することも可能です。これは医薬部外品の10倍の濃度であり、理論上はそれだけ高い効果が期待できます。
さらに、医薬部外品では原則NGとされている、同じ効果を持つ成分のダブル配合(例:抗炎症成分A + 抗炎症成分B)も、化粧品なら可能です。これにより、単剤では出せない相乗効果を狙うことができるのです。
参考文献:いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/yakuyou_kounou_1.pdf
損しないための「効果がある化粧品」を選ぶコツ
「じゃあ、成分濃度が書いていない化粧品の中から、どうやって本当に効くものを選べばいいの?」
ここが一番気になりますよね。
正直なところ、化粧品はピンキリです。配合成分の濃度が開示されていないことが多いため、見極めるのはプロでも難しいのが現状です。
ですが、いくつか「当たりをつけるためのポイント」があります。
1. 成分の「効く桁数(オーダー)」を知る
まず、取り入れたい成分が「どれくらいの濃度で効果が出るものなのか」という桁数(オーダー)を知っておくことが大切です。そのための情報源は、
- 論文を見る
- いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストを見る
例えば、人気の「ナイアシンアミド」という成分。
論文などで調べると、ヒト試験でエビデンスが出ているのは、だいたい1%オーダー(2〜5%程度)であることが分かります。
今はChatGPTなどのAIに「ナイアシンアミドの有効濃度に関する論文を教えて」と聞けば、ある程度の目安を調べることができます。これを知っておくだけで、「ナイアシンアミド0.001%配合」だけど堂々と訴求してる商品に惑わされにくくなります。
もう一つ、パッと見で分かりやすい基準があります。厚生労働省が発行している「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト」という文書を参考にする方法です。
ここには、メジャーな成分と、その「有効成分として認められる配合量」が載っています。これを見ることで、「この成分はだいたい〇〇%くらい入っていれば有効成分として認められるんだな」という基準が分かります。
もし化粧品メーカーが「高濃度配合」と謳っている場合、この基準値に近いか、あるいは超えているかが一つの判断材料になります。
参考文献:いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/yakuyou_kounou_1.pdf
3. 全成分表示の「1%ライン」を見極める裏ワザ
有効濃度が「1%以上」だと分かった場合、次に「全成分表示」を見て、実際にその量が入っているかを推測します。
化粧品の全成分表示には「配合量の多い順に記載する」というルールがありますが、実は「1%以下の成分は順不同(好きな順序で記載OK)」という例外ルールがあります。
そのため、メーカーは1%以下であっても、エキス類やビタミン類などのイメージの良い成分を、1%以下のグループ内の最初の方(リストの上位)に記載することがよくあります。
ここで重要なのが「1%ライン(境界線)」を探すことです。目安として、以下の成分は通常1%以下で配合されることが多いです。
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植物エキス:
(例:チンピエキス、ツバキ種子エキスなど)基本的には0.1%〜0.01%オーダーの微量配合です。(これらのエキス類は1%以下で効果を発揮するものがほとんど) -
高分子系の成分(増粘剤など):
(例:ヒアルロン酸Na、カルボマー、キサンタンガムなど)
これらは非常に粘度が高くなるので、固形分として1%も入れることはまずありません。0.1%〜0.01%程度が一般的です。 -
品質安定化剤・防腐剤:
(例:パラベン、EDTA、フェノキシエタノールなど)
これらの成分より後に、目的の成分(ナイアシンアミドやビタミンCなど)が書かれていれば、それは「1%以下」である可能性が非常に高いです。
逆に、これらの1%ラインの目安となる成分より前に書かれていれば、1%以上配合されている可能性が残ります。
少しマニアックですが、この見方を知っておくと、化粧品選びの精度がグッと上がりますよ。
ただ、高濃度系は、刺激などのリスクも高まりますので、自分の肌質を見極め、慎重にお願いいたします。
まとめ:美テラシーを高めて賢く選ぶ
- 医薬部外品は、特定の効果を訴求できるが、使える成分や配合量に制限があり、最新成分などは配合しにくい。医薬部外品にしか配合できない成分もある。
- 化粧品は、効能効果の表現に制限があるが、自由な処方設計が可能で、高濃度配合や最新成分の採用がしやすい。
- パッケージの言葉だけでなく、成分の濃度や処方のこだわりに目を向けることが、本当に良い製品に出会う近道です。
なかなか語られない、化粧品開発の裏事情を解説させていただきました。
私たちスプレーゼ研究部は、柔軟な発想と科学的根拠に基づき、お客様の肌悩みに真摯に向き合うことで、効果的な化粧品の開発に日々努めています。
目的の製剤によっては医薬部外品のこともありますが、自由な設計ができる「化粧品」を開発することが多いです。
美容リテラシー(美テラシー)をアップして、冷静にスキンケアを選べるよう、今後もコラムで情報をお届けしていきますね!
