スプレーゼ開発者はなぜ大手企業を退職して45万人登録YouTuberになったのか?

スプレーゼの代表をしております、株式会社エスプレッセの住田祥と申します。研究開発の責任者をしております。

SNSではすみしょうという名で活動しております。

私は当ブランドを立ち上げる前に化粧品OEMメーカーで研究職として勤務しておりました。

現在は、独立し、化粧品の成分や科学の解説をYouTubeやインスタなどで発信しております。ありがたいことにSNS総フォワー(YouTube、Twitter、Instagramなど、2025年現在)は60万人を超えることができました。プライベートでは2児(7歳と2歳の坊主たち、2025年時点)の父をしており、育児に奮闘しております。

そんな私の、サラリーマンからYouTuberになったきっかけをお話しさせてください。

大学時代のルーティン-研究と麻雀とダンス-

京都工芸繊維大学工芸科学研究科物質工学専攻修了。めちゃめちゃ長い名前で就活の時は苦労しました笑。しかもよくわからない専攻。

簡単に言えば、界面活性剤の合成と新規合成と評価を行っていました。研究室での生活は3年ほどで、研究をしながら、22時からはストリートダンスの練習、深夜2時からは麻雀という生活スタイルで楽しく過ごしておりました。

後輩からは話しかけづらい先輩と言われておりましたがw、しかし心の中では後輩の研究の手伝いしたくてたまらない、けれども自分から話しかけるのはなんか恥ずかしいみたいな感覚でした。

そんな中、後輩の1人と仲良くなり、今は妻として一緒に仲良く生活しております。

サラリーマン時代は化学メーカーで化粧品OEM研究

卒業後は化粧品の原料などを作っている一部上場の大手化学メーカーに就職しました。大学では界面活性剤の合成をやってたので、てっきり原料の開発部隊に配属されるかなぁと思っていたのですが、蓋を開けてみたらびっくり。化粧品の研究開発に配属されました。

ここでは化粧水、美容液、洗顔、クレンジング等々、いろんな化粧品メーカーさんの商品の中身を作るOEM開発を行っておりました。OEMというのは受託製造という意味で、いろんな化粧品会社さんから依頼を受けて、化粧品の中身(私たちはよくバルクと言ってます)を作る仕事です。

仕事はとにかくスピード重視。仕事量も非常に多いため、化粧品の処方開発、製造工程、薬事法、微生物試験など(容器やデザインのことはほぼノータッチでしたが、)化粧品の中身に関しては幅広い知識が得られました。

しかし、この時点では特に人生など特に考えていませんでした。なんとなく仕事を続けてなんとなく、そこそこのお給料で生きていくのかな?というくらい。大きな目標があるわけでもありませんでした。

異動を機に人生を見つめ直す

研究を7年ほど経験したのち、製造部門に異動になりました。新しいものを考えるのが好きなので、製造への異動はそんなに嬉しくなかったのですが、色々と経験しといた方がいいかな?と考え異動しました。

製造では、研究の時とやることが違います。例えば実験室と製造部では作る時の量が全く異なります。研究の時はせいぜい10キロ(牛乳パック10本分)くらいの配合量でしたが、製造部門となると1トン、5トン、10トン、とかです。コンテナとかタンクローリーに入れて運ぶほど。ビーカーで簡単に混ぜれるものも、1トン釜では混ざらない、そもそも原料が大きすぎて投入できないなどがザラにありました。

新しいことを覚えるのは楽しかったのですが、一番きつかったのが、これまでとは桁違いの即断即決力が求められたことです。現場の責任者的なポジションだったので、その日のトラブルはその日に判断して対処するということが毎日ありました。

ちょっと考えますので待ってください、ということが通じず、現場からは早く早くと急かされます。私の判断で消費者に届けるクリーム1トン(100gクリームなら1万個)がパーになって作り直しになるかもしれない。現場からいつ電話がくるのかと精神が徐々にすり減っていました。

私は現れるトラブルに急に対処したりする仕事が得意でなく、どちらかと言うとじっくりと考えて研究をしたり、新しい処方を作る方が好きだったので、正直そこの職場の仕事が自分には向いてないなぁっていうのは感じてきていました。

また要領も良くないので、多くの仕事をこなすことができず、家で考えたり、休日も仕事のことが頭から離れないことも多々ありました。生まれたばかりの長男、妻と過ごす時間が大切にできない日々が続きました。

この辺で、この先の人生、本当にやりたいことは何なのか、今の職場で良いのか、などを考え始めました。

そんなとき、とある看護師さんだったか?の話で心を動かされたのが、ほとんどの人間は死ぬ時にこう言って後悔するのだということ。

「一度きりの人生。本当にやりたいことをやっておけばよかった」

それを聞いて、本当にやりたいことは何かを考えるようになりました。本当にやりたいことは、自分の力で人の役に立てること。自分の責任で全てを決めていくこと。

もともと人に命令されるのが嫌で(サラリーマン向いてないw)そうすると、社長になるしかないなぁと思い始めました。社長なら失敗しても自分で責任がとれるから。

私が生き生きと働ける、やりたいことをしたいと伝えると、妻は「死んだ魚の目をしているすみしょうさんより生き生きしていてほしい」というような応援をしてくれて退職を決めました。(セリフは昔のことなので美化されている恐れがあります)

とはいえ、具体的に何がしたいかは決まっておらず、走りながら考えることにしました。

当時、ブログやYouTubeが流行り出していたときで、また自分としても何かを発信したい、自分の書いた文章を見てもらいたいなどの承認欲もありました。また人前で喋るのはめっちゃ苦手だったのでインターネットは好適だと考えました。

化粧品研究系YouTuberとして始動

最初はドラマを紹介するブログなどを書いていましたが、これといって本当にやりたいこととは思えず、悩んでいました。「本当にやりたいこと、かつ、ユーザーさんからの需要があるものは何か…?」と、落ち着いて考えることにしました。

ふとYouTubeを見ていると、スキンケア化粧品の成分解説チャンネルに出会いました。多くの方が成分に関心を持っていることに感銘を受けると同時に、私がこれまで培ってきた専門知識が、もしかしたら皆さんのお役に立てるかもしれない、という想いが芽生えたのです。

皆さまに「美容リテラシー(略して美テラシー)」を高めていただくことで、ご自身の人生をもっと豊かにしてほしい、という願いが芽生えました。

美容や化粧品や成分の正しい知識があれば、今までのスキンケアやメイクがもっと楽しくなります。

さらには、溢れる情報や巨大な広告に惑わされることなく、冷静にご自身に必要なものを選び取る力が身につきます。

そうなれば、これまで化粧品に悩み、費やしてきた時間やお金を、ご家族や趣味など、別のことにも使えるようになる。人生のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)も上がる。

そんな想いを胸に、これまで培ってきた化粧品の知見を元に、時には特許や論文も参照しながらスキンケア情報を発信するチャンネルを始めました。

半年くらいは再生数も数十回ほどでしたが、2019年の年末、ハトムギ化粧水の成分解説動画をきっかけに、いきなりチャンネルが伸び始めました。編集は下手ですが、今では300万回再生を超え、コメント欄には「成分の話ありがたい」「こんなチャンネルを待っていた」などの声が溢れ、本当に嬉しかったことを今でも鮮明に覚えています。

おかげさまで企業様とのタイアップや、書籍『スキンケア大全』(KADOKAWA)の出版も経験させていただきました。

さらに、情報発信だけでは届けきれない価値を形にするため、研究者時代の経験を全て注ぎ込んだ自社オリジナルスキンケアブランド『SOUPLESSE-スプレーゼ-』を立ち上げました。

コンセプトは、「シンプルだけど、本当に良いものを」。 肌にとって本当に必要な成分か、エビデンスはあるか、という点に徹底的にこだわり抜きました。

たくさんのステップは必要ありません。シンプルなケアで、誰もが美しく健やかな肌や髪を目指せる。そんな製品をお届けしています。

サラリーマンから独立してYouTuberになり、そして化粧品開発を行う。独立が良いと安易には言えませんが、私にはこのスタイルがとても合っていました。

これからも、YouTubeやSNSでの「情報発信」と、想いを形にした「製品開発」の両輪で、皆さまの豊かな人生に貢献できるよう、誠心誠意努めてまいります。

 今後とも、スプレーゼを、どうぞよろしくお願いいたします。