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記事: エプソムソルトに効果はある?マグネシウムの効果をヒト試験から科学的に考えてみた

エプソムソルトに効果はある?マグネシウムの効果をヒト試験から科学的に考えてみた

「エプソムソルトって効果ありますよね?」

最近このような質問をよくいただきます。私は知らなかったのですが、入浴剤として有名だそうです。

インターネットを調べると、「身体が温まる」「アトピーに効果がある」「肌がうるおう」などの情報も見かけますがエビデンスはあるのでしょうか。

そこで、スプレーゼ研究開発部が、エプソムソルトやマグネシウム入浴剤に関するヒト試験を調査しました。

結論から言うと、エプソムソルトの主成分である硫酸マグネシウムを使った古い試験では、ただのお湯より身体を温める可能性が示されています。ただし、使った量が書かれていないため、市販商品の使用量でも同じ効果が出るかはわかりません。

一方、肌のうるおい、アトピー、皮膚からのマグネシウム補給については、エプソムソルトそのものを使った信頼性の高いヒト試験は見つかりませんでした。

この記事の執筆者

すみしょう(住田 祥)

化粧品研究者。SNS総フォロワー50万人。上場企業で多数のスキンケアOEM開発に従事。論文やエビデンスに基づく「美容の真実」をわかりやすく発信し、情報を疑って冷静に判断する力=美容リテラシー(美テラシー)を高める活動を続けています。
成分追求スキンケア「スプレーゼ」の開発責任者。著書:スキンケア大全(KADOKAWA)、日本香粧品学会員
すみしょうのプロフィール写真

エプソムソルトとは?名前の由来と成分

エプソムソルトの主成分は、硫酸マグネシウムです。「ソルト」と呼ばれていますが、料理に使う食塩(塩化ナトリウム)とは別の物質です。

一般的な結晶状のエプソムソルトは、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4・7H2O)。つまり、今回紹介する「硫酸マグネシウム浴」の研究は、エプソムソルトの研究として見てよいと思います1。

名前は、イギリス南東部にある「エプソム」という町に由来します。この地域の鉱泉から硫酸マグネシウムを含む結晶が得られたことから、エプソムソルトと呼ばれるようになりました。

混同しやすい3つの成分

  • エプソムソルト:主成分は硫酸マグネシウム
  • 塩化マグネシウム入浴剤:主成分は塩化マグネシウム
  • 死海塩:塩化マグネシウムなど、複数の塩類を含む

どれもマグネシウムを含みますが、成分や配合比率は違います。エプソムソルトと硫酸マグネシウムはほぼ同じものとして扱えますが、死海塩や塩化マグネシウムの研究結果を、そのままエプソムソルトに当てはめることはできません。

研究は「何と比べたか」が大事

例えば、エプソムソルトを入れたお風呂に入って身体が温まった!というデータがあったとします。

でも、それだけではエプソムソルトの効果とはいえません。エプソムソルトを入れなくても、温かいお湯に入れば身体は温まるからです。

本当に知りたいのは、同じ温度のお湯にエプソムソルトを加えることで、効果が上乗せされるかです。そのためには、湯温や入浴時間をそろえて、エプソムソルト浴とただのお湯を比べる必要があります。

さらに、参加者や試す順番をくじ引きのようにランダムに決めると、年齢や体質などのバイアス(偏り)を小さくできます。このような研究を「ランダム化比較試験(RCT)」といいます。

論文を読むときは、「誰に、何を使い、何と比べ、何を測ったのか」を見ると、かなりわかりやすくなります。それを整理する枠組みをPICO(ピコ)といいます。

  • P(Participants):対象者―誰を調べたか
  • I(Intervention):使用したもの―何を試したか
  • C(Comparison):比較対象―何と比べたか
  • O(Outcome):評価項目―何を測ったか

この記事では、このあとの文献もPICOで整理します。ただし、PICOが書かれているだけで信頼性が高いわけではありません。参加人数や比べ方、ランダムに分けたかなども一緒に確認します。

調べた効果 見つかったヒト研究 現時点でいえること
身体を温める効果 硫酸マグネシウム浴とただのお湯を比べた1990年の学会要旨あり 保温する可能性はあるが、市販商品の使用量でも効くかは不明
アトピー 改善したという症例紹介はあるが、適切な比較試験はなし アトピーの治療効果があるとはいえない
肌のうるおい エプソムソルトではなし。死海塩では30人の比較試験あり 死海塩では改善。エプソムソルトでも同じかはわからない
皮膚からのマグネシウム補給 比較対象のない19人の報告書あり 健康に役立つ量を補給できるとはいえない

エプソムソルトで身体は温まる?

まず、エプソムソルトは、ただのお湯より身体を温めるのか?

調べてみると、1992年の総説に、硫酸マグネシウム浴とただのお湯を比べたヒト試験のデータが紹介されていました2。

  • 対象者(P):健康な成人。ただし、確認できた論文では人数が明記されていません
  • 使用したもの(I):硫酸マグネシウム浴
  • 比較対象(C):ただのお湯
  • 入浴条件:41℃のお湯に、長座位で5分間の全身浴
  • 評価項目(O):上腕の皮膚表面温度、末梢血流量、経皮組織酸素分圧など

結果:硫酸マグネシウム浴では、ただのお湯と比べて、入浴後20~120分の複数の時点で皮膚表面温度が高くなりました。末梢血流量も、入浴後10~90分の複数の時点で高い結果でした。

お、これは保温効果がありそう?!と思う結果です。

この研究からいえること
硫酸マグネシウムを入れたお湯では、ただのお湯より入浴後の皮膚温や末梢血流量が高く保たれました。硫酸マグネシウムに保温効果がある可能性を示すヒトデータではあります。

ただ、ここで気になったのが、硫酸マグネシウムをどのくらい入れたのか?です。

市販の商品と同じくらいの量なのか、それとも、かなり濃い条件だったのか。ちょっと元文献までさかのぼって調べてみました。41℃のお湯に5分間入浴したことまでは書かれていましたが、肝心の硫酸マグネシウムの濃度や投入量は書かれていませんでした3。

うーん。。。商品と同じくらいだったのか、かなり濃かったのかを比べられないんですよね。

なので結論は、「硫酸マグネシウムに保温効果がある可能性は示されている。ただし、市販のエプソムソルトを表示どおりに使って同じ効果が出るかは判断できない」となります。

エプソムソルトはアトピーに効果がある?

「エプソムソルトはアトピーに効果がある」というイメージの宣伝もよく見ますよね。しかし、エプソムソルトでアトピーが改善するかを、ただのお湯と比べた信頼性の高いヒト試験は見つかりませんでした。

あるクリニックでアトピーが改善した症例の紹介はありますが、RCTではないですし、ステロイドとの併用かもしれません。アトピーは改善と悪化を繰り返すので、確実なことはいえません4。

ただ、今後、比較試験を行うきっかけにはなると思います。

なお、日本皮膚科学会・日本アレルギー学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」では、ステロイドなどの抗炎症外用薬や、保湿によるスキンケアが推奨されています。入浴やシャワーは皮膚を清潔に保つ方法として扱われていますが、入浴剤については質の高い研究が少ないと整理されています5。

エプソムソルトで肌はうるおう?

エプソムソルトそのものではありませんが、参考になる研究として、マグネシウムを多く含む死海塩の比較試験があります。

ここで、死海塩について少しだけ説明します。

一般的な海水は、重さの約3.5%が塩類です。これに対して、2015年に測定された死海の表面近くの水では、主なミネラル成分が約27.8%を占めていました。つまり、死海には普通の海のおよそ8倍の濃さで塩類が溶けています6、7。

主な成分 一般的な海水 死海の水 普通の海との比較
塩類全体 約3.5% 約27.8% 約8倍
マグネシウム 約0.13% 約3.91% 約31倍
カルシウム 約0.04% 約1.56% 約39倍
カリウム 約0.04% 約0.62% 約16倍
ナトリウム 約1.06% 約2.31% 約2.2倍

死海は、単に食塩が濃い海ではありません。特にマグネシウムは、一般的な海水の約0.13%に対して、死海では約3.9%。ミネラルの構成そのものがかなり違います。

Prokschらは2005年、アトピーになりやすい体質で、肌が乾燥している成人30人を対象に試験を行いました8。

  • 対象者(P):アトピーになりやすい体質で、肌が乾燥している成人30人
  • 使用したもの(I):片腕を5%の死海塩水に15分間浸す
  • 比較対象(C):反対側の腕を水道水に15分間浸す
  • 評価項目(O):肌の水分量、肌から逃げる水分量、肌の粗さ、赤みを6週間測定

結果:死海塩を使った腕では、水道水に浸した腕より肌の水分量が増え、肌の粗さや赤みが減りました。もともと肌から水分が逃げやすかった人では、肌のバリア機能を示す数値も改善しています。

この研究からいえること
マグネシウムを多く含む死海塩は、水道水と比べて、乾燥肌の水分量などを改善しました。これは良い結果だと思います。

この研究だけではいえないこと
この研究で使われたのは、塩化マグネシウムなどを多く含む死海塩です。硫酸マグネシウムが主成分のエプソムソルトとは成分が違います。死海塩で肌がうるおったからといって、エプソムソルトでも同じ効果が出るとは限りません。

さらに、この研究はアトピー性皮膚炎そのものを治療した試験ではありません。対象は「アトピーになりやすい体質で、乾燥肌の人」です。肌のうるおいが改善したことと、アトピーが治ることは別の話ですね。

皮膚からマグネシウムを補給できる?

マグネシウムは、筋肉や神経などの働きに必要なミネラルです。そこで、エプソムソルトのお風呂に入れば、皮膚からマグネシウムを補給できるのでは?という話があります。

この考え方が広まった理由は、わりとわかりやすいです。

  1. マグネシウムは身体に必要
  2. 不足する人もいる
  3. マグネシウムのサプリメントを多く取ると、下痢や腹痛が起こることがある
  4. それなら、皮膚から吸収すればよいのでは??

という流れです。マグネシウムスプレー、フレーク、エプソムソルト浴などが、「胃腸を通さずに補給できる」と紹介されるようになりました。

よく引用されるのが、健康な成人19人にエプソムソルト浴を7日間行い、血液と尿中のマグネシウムを測った報告書です9。

  • 対象者(P):健康な成人19人
  • 使用したもの(I):エプソムソルト浴を1日1回、7日間
  • 比較対象(C):なし
  • 評価項目(O):血液と尿中のマグネシウム・硫酸イオン

結果:報告書では、入浴後に血液や尿中のマグネシウムが増えた参加者がいたとされています。

でも、エプソムソルトを入れないお風呂と比べていません。参加者ごとの濃度も一定ではなく、査読を経た学術論文でもありません。

しかも、お湯の温度は50~55℃で、入浴時間は12分間。火傷レベルの温度です。

うーん。。。何の試験なのでしょうか。高温で皮膚バリアに影響が出て、マグネシウムが通りやすくなったということ??

まとめ

エプソムソルトは、硫酸マグネシウムを主成分とする入浴剤です。

硫酸マグネシウム浴とただのお湯を比べた古いヒト試験では、入浴後の皮膚温や末梢血流量が高く保たれていました。保温効果は期待できるかもしれません。ただし、使った量が書かれていないため、市販のエプソムソルトをどれくらい使ったらいいのかは不明です。

乾燥肌やアトピーについてはエビデンスが不足していますが、今後の研究に期待される前向きな報告はある感じですね。

私たちとしても、入浴剤開発の際に参考になる調査でした。試験条件を整えて、実際の使用量で、自分たちでも臨床試験をしてみたいなと感じました。

P.S.

ちなみに、市販のにがり(主成分は塩化マグネシウム)でも、同じように感じる可能性はあるかもしれません。試してみるのもありかもしれませんね。

ただし、浴槽や給湯器を傷める可能性もあるので、使用する場合はメーカーの注意表示を確認したうえで自己責任になりますが。。。

引用文献

  1. National Center for Biotechnology Information. PubChem Compound Summary for CID 24843, Magnesium Sulfate Heptahydrate. PubChem
  2. 長井克介, 渡邊智, 川崎義巳. 水浴における浴用剤成分による生体への作用. 日本生気象学会雑誌. 1992;29(1):25-33. 全文PDF
  3. 長井克介, 鳥居和樹, 川崎義巳, 阿岸祐幸. 全身浴におけるマグネシウム硫酸塩の保温効果について. 第55回日本温泉気候物理医学会総会一般演題抄録, 演題57. 日本温泉気候物理医学会雑誌. 1990;54(1):74. 抄録集PDF
  4. 青山ヒフ科クリニック. 第10回 敏感肌、アトピー性皮膚炎に対するマグネシウムの効果. クリニック記事
  5. 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌. 2024;134(11):2741-2843. doi:10.14924/dermatol.134.2741. PDF
  6. Sirota I, Arnon A, Lensky NG. Seasonal variations of halite saturation in the Dead Sea. Water Resources Research. 2016;52(9):7151-7162. doi:10.1002/2016WR018974. 全文
  7. Millero FJ, Feistel R, Wright DG, McDougall TJ. The composition of Standard Seawater and the definition of the Reference-Composition Salinity Scale. Deep-Sea Research Part I. 2008;55(1):50-72. doi:10.1016/j.dsr.2007.10.001. DOI
  8. Proksch E, Nissen HP, Bremgartner M, Urquhart C. Bathing in a magnesium-rich Dead Sea salt solution improves skin barrier function, enhances skin hydration, and reduces inflammation in atopic dry skin. International Journal of Dermatology. 2005;44(2):151-157. doi:10.1111/j.1365-4632.2005.02079.x. PubMed
  9. Waring RH. Report on Absorption of Magnesium Sulfate (Epsom Salts) Across the Skin. School of Biosciences, University of Birmingham. Unpublished report. 報告書PDF


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