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記事: 美テラシー講座Vol.4 「鉱物油は肌に悪い」は、昭和の都市伝説です

研究開発裏話

美テラシー講座Vol.4 「鉱物油は肌に悪い」は、昭和の都市伝説です

【連載】美テラシー™︎講座 👉 この連載の記事一覧はこちら

スプレーゼ代表のすみしょうです。

今日は第4回目の「美テラシー講座」をお届けします。

皆さんの「愛用コスメの好きなところ」はどこでしょうか。

成分、効果、ブランド、コスパなど、いろいろありますが、「安全性」を挙げる方も多いのではないでしょうか。

今日のテーマはその安全性に関わるお話。

「〇〇フリーの落とし穴」について解説していきます。

パッケージによく書かれている「〇〇フリー」。

これにこだわって選んでいる方も多いと思いますが、実はちょっとした誤解があるかもしれません。

まだ「無添加」で選んでる? 現代の化粧品選びの常識

化粧品のパッケージで、こんな表示をよく見かけませんか?

  • 無香料
  • パラベンフリー
  • シリコンフリー
  • 鉱物油フリー
  • 着色料フリー
  • 石油系界面活性剤フリー

これらが書かれていると、「入っていると肌に悪いんだ」というイメージを持ってしまいますよね。

個人的には、「人によっては避けたほうがいい成分」と、「昔は避けたほうが良かったけど、今は問題ない成分」があると思っています。

普通の肌質の人は「〇〇フリーとか無添加かどうかは、そこまで気にしなくていい」というのが私の考えです。

「鉱物油は肌に悪い」は、昭和の都市伝説です

鉱物油は絶対使いたくないです!という方も多いです。ですが、医薬品として使われるワセリンも鉱物油です。ベビーオイルも鉱物油です。

鉱物油は、石油から取れる油のことですが、昔の精製技術が低かった時代には、不純物が多く含まれていて、それが肌トラブルの原因になっていたようです。

しかし今は、医療用にワセリンが使われるほど、純度が高く安全な成分になっています。

他にも「着色料フリー」。これは戦後に多発した「女子顔面黒皮症(リール症)」という肌トラブルが背景にあります。当時は、ある色素に含まれる不純物が強いアレルゲンだったことが判明しました。その後、1976年以降に規制が始まり、現在ではこの症状は激減しています。1)

このように、かつて危険とされた成分は禁止されたり、上限が決められたりしているので、現代の化粧品はほとんど問題ないレベルになっています。

もちろん、記憶に新しい「白斑問題」や「石鹸の小麦アレルギー」のような事例もあったので、「100%絶対に安全!」と断言するのは難しいのですが……。

基本的には、過度に怖がらなくて大丈夫です。

メーカーの「戦略」に踊らされてない? フリー表記の裏側

実はこの「〇〇フリー」という表示は、メーカー側の「マーケティング戦略」という側面も結構あります。

例えばパラベン(防腐剤)。

これは世界中の大手メーカーも昔から使っている、非常に実績のある成分です。

何十年も使われているので、安全性に関するデータが膨大にあり、防腐剤の中ではかなり安心できる部類に入ります。

ただ、稀に刺激を感じる人がいるのも事実。

そこで他社との差別化として、「パラベンフリー」と打ち出すことで、「うちはパラベンを使っていないから安全ですよ」というイメージを作ろうとするわけです。

さらに厄介なのが、パラベンフリーにしたからといって、防腐剤が入っていないわけではないということ。

代わりに「保湿剤のような防腐剤、天然系の防腐剤」などに置き換えるのですが、その代わりの成分が本当にパラベンより安全なのかと言われると、実はデータが少なすぎて、単に刺激やアレルギーの報告がまだ挙がっていないだけ、なんて可能性もあります。

また、「シリコーンフリー」に関しては、中小のマーケティング上手なメーカーさんが流行させた訴求です。

個人的にはあまり意味のないフリーだと思っています。

「毛穴に詰まる」といった噂もありましたが、そのエビデンスはありません。大手メーカーも否定しています。

シリコーンは毛髪の滑りを良くして手触りを良くしたり、絡まりを防ぐので、めちゃくちゃ優秀。

かつ、酸化劣化もしにくく安定しているので、とても良い成分です。

処方の目的によって使い分けはしますが、安全性については全く問題ない成分です。

個人的には、鉱物油、シリコーン、石油系界面活性剤の3つは、現代では安全性が高いのに嫌われている「かわいそうな成分」だな、と感じています。

「発がん性あり!」という情報に振り回されないために

最近驚くのが、成分情報に敏感になりすぎて、少しのリスク情報でも「危険だ!」と恐怖を感じてしまうケースです。

例えば、「コカミドDEA」という成分は発がん性物質に登録されました、と言われたらどう思いますでしょうか。

これ、シャンプーにめちゃくちゃ多用される成分ですが、確かに、WHOの関連機関であるIARCの発がん性リストに載りました。2), 3)

コカミドDEA(および残留するジエタノールアミン)が、動物実験で発がん性を示したためです。

では、私たちが使う化粧品レベルで、本当に危険なのでしょうか。

結論から言うと、気にしなくて良いと私は考えています。

「WHOのリストに載った!危険だ!」と慌てる前に、このリストの正体を知っておきましょう。

実はこのリストは、「危険度の高さ(強さ)」順ではなく、「証拠の確実さ」順に並んでいるだけなんです。2)

例えば、一番上の「グループ1(発がん性がある)」には、タバコやアスベストやプルトニウム(放射性物質)と一緒に「ハム・ソーセージ(加工肉)」や「アルコール飲料(お酒)」も入っています。

だからといって、「ハムやお酒」が一切禁止というわけではないですよね。

一方で、アスベストやプルトニウムは厳重な管理が必要になります。

重要な視点は、「量」です。そして、「リスク強度」です。

  • どれくらいの量を摂取したらリスクになるのか?
  • 影響があるとしたらどれくらい?100人に1人?1万人に1人?

毎日どれくらい続けたらリスクが上がるのかという「量」の視点、上がるとしたらどれくらいのリスクが上がるのかという「強度」について冷静に考えて判断するべきだと思います。

そして、肝心のコカミドDEAが入っているグループは、「グループ2B」でして、「人に対する発がん性が(よくわかっていない)」というレベルです。動物実験で確認されたというのが現状です。

「証拠がある=猛毒」ではありません。

過剰に怖がる必要はないと私は考えています。

リスクがあると言われたら、「それってどれくらいのリスクなの?」と一歩引いて考えてみてください。

自分で専門文献を調べるのは大変なので、ChatGPTなどのAIに聞いてみるのがおすすめです。

「エビデンスを調べて、中学生にもわかるように説明してください」と投げかければ、冷静な答えが返ってきます。

どうしても心配な場合は、規制が厳しいヨーロッパの化粧品基準を調べてみるのもおすすめです。

ヨーロッパは「疑わしきは罰する」スタイルなので、日本にはまだ出てない安全性の議論が見つかることもあります。

天然=やさしいとは限らない。イメージに惑わされないコツ

もう一つ、よくあるのが「天然」「植物」だから安心というイメージ。

なんとなく、合成は悪くて、植物由来は肌に優しい気がしませんか?

実は、化学的な視点で見ると、逆のことが言えたりします。

私が処方開発をしていた時、もし試作品で「肌に刺激があった」と言われたら、真っ先に疑う成分はこんな感じです。

  • 防腐剤(パラベンなど)
  • 防腐効果のある保湿成分(ペンチレングリコールなど)
  • 高配合されたアクティブな原料(レチノールやビタミンCなど)
  • 香料

そして、その次に疑うのが「天然のエッセンシャルオイル」や「植物エキス」なんです。

逆に、鉱物油や合成油、シリコーンオイル、石油系界面活性剤などは、疑いの優先順位がかなり低いです。

天然香料や植物エキスというのは、植物から採って濃縮したものです。

植物由来なので、そこには何百種類もの化合物が複雑に混ざり合っています。

産地や収穫時期、天候によっても成分バランスが変わりますし、微量な不純物も含まれます。

一方で、合成香料や合成成分というのは、狙った成分だけを純粋に作ったもの。

構造がシンプルで、不純物が少ないんです。

アレルギーのリスクという点だけで見れば、何百種類も混ざっている天然素材のほうが、肌に合わない確率は高くなる可能性だってあるんですよ。

(もちろん、合成でもアレルギーリスクがある成分はありますが、国内製品であれば配合上限などのルールがあるので、過度に怖がる必要はありません)

ゆるく賢く選ぶのがおすすめ

いろいろ言いましたが、大事なのは、「現代の基準はどうなってるのか?」「天然=善、合成=悪」と決めつけないこと。

「肌に合うならなんでもOK!」くらいの、ちょっとゆるい考え方でいたほうが、化粧品選びの幅が広がって楽しいと思います。

もし化粧品のことで気になることがあれば、スプレーゼ公式LINEで聞いてもらえれば可能な限り研究部がお答えしますので、ぜひ活用してくださいね。

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次回の予告と宿題

では、次回の講座に向けた宿題(ワンアクション)です。

皆さんが今使っている化粧品、「いくらで買ったか」覚えていますか?

だいたいで構いませんので、ちょっと値段を思い出しておいてください。

次回は、禁断のテーマ。「化粧品の原価」についてお話ししたいと思います。


【参考文献】

1) 小塚 雄民. 女子顔面黒皮症: その研究の軌跡. 日本香粧品科学会誌. 1981, vol. 15, no. 1, p. 5-9.

2) 農林水産省. 国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について. https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html

3) WHO IARC. IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans. https://monographs.iarc.who.int/list-of-classifications


【編集後記】

今回、香料の話が出ましたが、私自身は天然香料が大好きです。

香りの奥深さや心地よさは、やっぱり天然香料には敵いませんからね。

食品の世界でも「香料」って大事ですよね。

化粧品ではフレグランス、食品ではフレーバーなんて呼びますが。

私、最近ジンジャエールが大好きでして。手作りで理想のジンジャエールができるように、家で実験しています。スパイスの世界もかなり奥が深いですね。

一発目のレシピは全然美味しくなかったです笑。

それでは、また次の講座でお会いしましょう。さようなら!

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